犬をどう迎えるか
わたしが子どものころには飼育数も多くなかったこともあり収容所でチワワを見かけることなど皆無でしたが、いまではチワワをはじめ、以前なら収容されていることのなかったような犬種がたくさんいます。
犬を迎えたい人は、どこからどのようにして迎えるのがよいのでしょうか?
Big Tree For Animalsさんの連載コラムに、とてもよい記事がありました。以下記事のリンクします。
【米国発】連載コラボ企画!第7回目:子犬と成犬譲渡どちらがあってる?
そういえば以前、里親を探すお手伝いをしたときに
「仔犬はいませんか。仔犬でなければできるだけ若い犬がいいです」
といわれたことがあります。
なぜ仔犬がよいのかを伺ったところ、「犬は寿命が短いから」という返答がありました。
そうですね。できるだけ犬と長い年月を過ごしたい気持ちは本当によくわかります。仔犬のころから愛情も時間もたーっぷりかけて育てた犬の愛おしさもよーくわかります。
だけど、寿命なんてわからないものです。若くて健康だった犬が、ちょっとした事故や原因不明の病気でまだやんちゃな年頃で命を落としてしまったり、10歳で迎えても10年近くいっしょに暮らすことができたり。
それから、自分が里親になってみてわかったこともいっぱい。人によってちがうのかもしれませんけれど、わたしは、10歳で引き取った犬も仔犬から育てた犬も、同じように愛おしく感じましたし、年月の積み重ねを否定はしませんが、あぁ時間じゃないんだなーって毎日感じています。
『シニア保護犬を応援し隊! 2015夏
ワンコを迎えるなら子犬からと思っていませんか?
シニアを家族に迎えるシアワセ♪ 里親さんに聞いちゃいました!』
わが家のラナとのご縁をいただいたWonderful Dogsさんで、ラナのこと紹介いただいた記事がありますのでリンクしておきますね。
シニア卒業犬~ラナ~
http://wonderfuldogs.blog118.fc2.com/blog-entry-3482.html
ほかにもしあわせになったシニア犬がいっぱい!
Wonderful Dogsの卒業シニア犬たちです。
http://wonderfuldogs.blog118.fc2.com/blog-category-630.html
犬を迎えるときの環境、ライフスタイルに合った年齢の犬を選ぶことはとても重要です。
仔犬は食事回数もトイレの回数もおおいし、なんでも口にいれてしまう、ほんとに目がはなせないです。ペットショップでの店頭販売では購入のときに適切なアドバイスをしてくれる販売員も少なく、手間をかけずにラクして都合よく可愛がりたい飼い主に対して耳ざわりのいいこと(飼いやすい、健康、散歩はあまりいらない、仔犬でも留守番OKなど)言うことが往々にしてあります。相手のライフスタイルをヒアリングして自制を促すことはほぼないでしょう。
少なくとも、わたしがペットショップチェックで回った(数年をかけて数百店舗を廻りました)たくさんのお店の接客で、そういった対応を受けることはありませんでした。
個体差があるので、もともとの性格がのんびりおおらかですくすく育つ犬もいますが仔犬のときのしつけ不足や社会化不足で成長に伴って問題行動がでる犬も多く、飼い主が対処できずに飼育放棄となってしまうことも多々あります。
ライフスタイルに合った犬を譲り受けていれば、無理せずよい関係を築くことができたかもしれないのに、とても残念なことです。
これから犬を迎えることを考えている方には、ぜひご自身の環境に無理のない年齢の犬を、”買う”という選択肢以外からも見いだして犬とかけがえのない時間を過ごしていただきたいなと思います。
飼い主の飼育放棄、バックヤードブリーダーによる売れ残るほどの犬の繁殖と遺棄、ブリーダー事業崩壊による放棄、多頭飼育の崩壊による飼育放棄、これらはなぜ後を絶たないのでしょうか。
”買う”側が”買う場所”を見定めないことに責任はないのでしょうか?
無自覚の加害はゼロでしょうか?
ご自身のライフスタイルや環境を冷静にみなおして、犬と暮らす時期を先に延ばすことも犬への愛情です。
東京都福祉保健局 「犬を飼うってステキ – ですか?」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/yomimono/dokuhon.html
そしてさいごに、飼育困難に直面している飼い主さんにお願いです。飼育に行き詰まったときは、命を奪う選択肢で頭をパンパンにして保健所に連れて行ったり、遠くに捨てたりせず、どうか他人に助けを求めて下さい。相談にのってくれる人も、力になってくれる人も、必ずいます。
2012/05/30追記:
コンラート・ローレンツの著書にこんな一文があったのを思い出しました。
イヌを手に入れる前には、自分の神経がどれほどの負担に耐えられるかを考慮しておくべきである。フォックス・テリアのように非常に元気のよいイヌは神経質な人を仰天させることなどぞうさもないし、とくにその落ち着きのなさが活力旺盛のためであるよりも、非常に興奮しやすい神経系のためである場合にそうである。その主な喜びが、心のこもった眼差しで主人をみつめては喜ばせるセンチメンタルなセッターは、移り気な多くのちびのテリアよりも、都会の一部屋にとじこめられた監禁状態を苦にしない。
ペットショップでの接客で、「チワワは散歩の必要がない」と言われたという方が、わたしの知っている限りでも相当数います。「散歩が要らないならラクでいいね」と購入した人もいるでしょう。
たしかに、チワワにジャックラッセルテリアと同じ散歩量は必要ありませんが、チワワにはチワワ(個体)に合った散歩時間(量)、暑い季節・寒い季節は負担のない時間を選んで散歩することが犬の脳(心)と身体にとって健全です(散歩の制限を受ける健康状態の犬でなければ)。
「うちの犬は散歩が嫌い」という人もいます。しかし、「外が嫌いなんだから家にいればいい」では、ただでさえストレスのかかる災害時など、家の外に連れ出したらとたんにパニックになってしまうのではないでしょうか。そして、具合が悪くなって動物病院に行く必要があるとき、または入院させる必要があるとき、ストレスによってより一層健康を損なうことになってしまいかねません。
散歩が嫌いな理由はなんでしょう?ゆっくりと時間をかけて克服してあげるのを諦めていませんか?自分ひとりの力でどうにもならないときは、トレーナーの手を借りるのもひとつだと思います。
わたしは犬の手を借りました。
じつはうちのチコ、散歩ができませんでした。我が家に来るまで、ケージの外に出たことがなかったため、後ろ肢の筋肉も弱く、室内でも、すこし走ると膝が外れていました。外の世界が怖くて怖くて仕方のない犬でした。散歩好きな犬としか暮らしたことのなかったわたしは途方に暮れましたが、先住犬のパウと黒のおかげで、お散歩大好きになりました。
1匹で外に連れ出すとまったく動けなくなってしまったチコでしたが、パウと黒がはさんで歩くとおそるおそるでもいっしょに歩いてくれました。数ヶ月経つ頃には、チコ1匹でも自信たっぷりに、りっくりっく歩くようになっていました。
ガリガリで、ブラシをすると痛がるほど痩せていたチコですが、じょじょに筋肉がつき、とんでも走っても膝は外れないようになり、活き活きとたのしそうに散歩をしています。うれしそうなたのしそうな散歩中の後ろ姿が、本当に愛おしいです。
雨の日も雪の日も、なにがなんでも散歩というのではありません。しかし、犬のためにそれなりの時間をとってあげられる状態で犬を迎えることが、犬と飼い主双方の幸せにつながるのではないかと思い、追記しました。
参考文献:人イヌにあう(コンラート・ローレンツ著/小原秀雄訳)
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